【FX】稼げ!最強の武人『100万失い異世界へ』: Story1

FX 稼げ!最強の武人

【FX】稼げ!最強の武人 ~FXのトレーダーの頂きへ~

Story.1 『100万失い異世界へ』

————————ガンッ!!

深夜2時、静寂に満ちたのワンルームに突如荒々しい音が響いた。

『くっ・・・』

うめき声が響き、不規則に荒くなった呼吸と共に白い息が吐き出される。

部屋は静まり返り、部屋の隅でファンヒーターが赤いランプを点滅させながら甲高い警告音を響かせている。

『ありえねぇよ・・・』

27歳、川瀬信二(かわせ しんじ)は小さくつぶやく。

冷え切った部屋の中でチャートを見続けて26時間。祈りながら見守り続けて丸一日以上、先ほどついにチャートを見続ける必要もなくなってしまった。昨晩から2度目の強制ロスカットだ。再びエントリーする気力も資金もなくなってしまった。

パソコンデスクに乗せた拳を見ると血が滲み、壁には小さな窪みができていた。

パソコン画面には証券会社の口座残高と MT4のポンド円のチャート が表示されている。チャートに表示されたローソク足がピクピクと小刻みに急に動き始めたかと思うと、次の瞬間大きく上昇した。

————————ガンッ!!

値を上昇を見た信二は、見るに耐えられず再びパソコンデスク脇の壁に新しい凹みを作った。

信二の強制ロスカットを見計らったからのように相場は反転、急上昇していた。ほんの数pips前にこの上昇が起きていれば信二の資金は守られたかもしれなかった。

FXで取引をしていると頻繁にこういうことが起こる。自分の損切りを引っかけて予想していた方向に急に動き出したり、自分の利益確定の目標ライン一歩手前で急に値を戻してしまったり。FX業者がトレーダーの取引を監視して値を動かしているのではないかと本気で疑いたくなるほどだ。

『100万なくなっちまった・・・』

昨日の夜の時点では128万円あった口座残高が、現在19万円まで減っていた。

『やべぇよ、やべぇよ、、、ホントにやべぇよ』

額に油汗を滲ませ信二は頭を抱える。信二の頭に浮かぶのは金を借りた友人の顔と、そもそも金を借りっぱなしになっている親の顔だった。

友人からは絶対増やして返すからと80万借りており、100万にして返す約束だった。親にはいろいろ理由をつけて50万借りている。そして消費者金融にも手を出し80万借りており、利息だけでも毎月一万円近くかかっている。

総額230万円の借金 ———————— 。

身の毛がよだつとはこのことだと背筋が凍る。

『死ぬ、、、。マジで死ぬ、、、。1年前、あんなに決意したのによ・・・』

信二がFXを始めたのは1年前だった。たいして相場の知識もない中で何もできないまま大損した。無くなったのは社会人になってからコツコツ貯めた貯金の90万だ。

絶対に取り返してやると固く決意をしてしっかり勉強もしたはずだった。というより実際相当勉強をした。あらゆる本を読み漁り、FXのブログもたくさん読んだ。ブログ主に質問までして勉強してきた。あらゆるインディケーターも勉強したし、本やネットで紹介されているあらゆる手法を試し準備したはずだった。だからこそお金が増えていくことは当然であって、まさか損失を出すことになるとは全く思わなかった。多少の損切は当然覚悟していた。しかしこんなに取り返しのつかない損失を被ることになるとは思いもしなかった。

相場の世界に神様がいるなら、なぜかと聞きたかった。なんでこんなことになるのかさっぱりわからなかった。気が付いたらもう引き返せないところにいただけだ。

『なんでだよ・・・』

信二は喘ぐようにつぶやき、うなだれる。

『神様なんでだよ・・・。しっかり勉強もしたし、ルールもずっと守ってた。一回だけじゃないか、ルール破ったのは・・・。金が今なくなるのは本当にヤバいんです。どうにかしてくれよ!』

つぶやきく声は次第に大きくなる。

『なんでもするから、助けてくれよ!』

懇願するように叫んだ、、、その時だった。

うなだれる信二の目の前が急に暗くなり、座っていたはずの椅子がなくなる。急な変化にバランスを崩し、驚き辺りを見るが視界には暗闇以外なにも映らない。

『な、なんだよ・・・、これ!』

真っ暗の視界の中に夜空の輝くように星々のように無数の光がきらめき始めた。そして突如として信二の体は突風に吹かれたかのように吹き飛ばされる。周囲の光は信二の後ろへと流れていく。まるで宇宙空間に放り出されたようだった。

信二は、FXのことなどは忘れ、本気で命の危険を感じて冷や汗を滲ませていた。そして次の瞬間 ———————— 、ドカッ!。

『痛って!』

信二は何が起こったかわからない。
突然現れた床で顔と膝を打ち反射的に呻く。痛みに喘ぎながら突然現れた床を触る。ざらついた感触を感じる。床は木製だろうか?

目を開くと光がまぶしく差し込み、木造の床を確認する。さらに周囲に視線を向けてみる。古びた教会堂のような場所だった。

不可解なのは自分を中心として描かれている円形状の模様。白のチョークで描かれていた。信二はいぶかしみながらも円形状の模様のわきに立つ二人の男女に視線を止めた。

『おい!やったぞ!!ついに成功した』

低いバリトン風の声を響かせるのはもじゃもじゃ頭に巌のようなデカい身体の男 だった。

『いやいや、ありえないわ!あんたのその変な髪形を受け入れるトレーダーがいるなんて、、、』

低いバリトンとは対照的にお嬢様風の高い女の子の声を発するのは金色の髪の毛を高い位置でくくった小柄な少女だった。

男はデカい身体に胸当てや肩当などガチャガチャと防具をつけ、少女は金持ち老人が持つようなステッキを持っていた。

『いったいこれは、、、』

信二が声を上げようとした瞬間、ドカドカと巨体の男が信二に歩み寄り急に肩を掴んできた。

『お前!いいやつだな!まだパンツ一丁レベルのようだが、お前はいいやつだから俺の弟子にしてやるよ!』

男は言う。

『あなたも物好きね。こんな髪形の何がいいのよ。ただ『パンツ一丁』レベルでゴルドンの弟子にしてもらえるなら『もじゃもじゃの呪い』もありなのかもしれないわねぇ』

少女が告げる。

なんのことかわからない信二は床に座ったまま目の前の光景をただ眺める。一つわかるのは、夢でなければ自分は異世界に召喚されたのであろうこと。わかりやすく魔法陣のような模様が自分の周りに書いてあるからだ。ただ理解に苦しむのは、なぜか自分が裸になりブリーフ一丁で細い棒だけもって召喚されているのかということだった。

『ゴルドン』と呼ばれる巌のような大男と『金髪のお嬢様』はいったい何なのか。そして信二が召喚された世界は何なのか。

直前のFXの大損のことなど忘れて呆然とする信二であった。

≪次回に続く≫